葉酸が不足すると、どのような症状が起こるのでしょうか? ここでは、葉酸の不足で起こる、さまざまな「健康上のリスク」について、説明したいと思います。
葉酸欠乏症について
葉酸欠乏症は、葉酸の不足や吸収不良によって起こります。葉酸欠乏症で見られる兆候はは、以下の通りです。
息切れ | (肌が)青白くなる | 貧血・めまい | 味覚の低下 |
手足のしびれ | ふるえ | 発熱 | だるさ・疲労感 |
舌がただれる | うつ | 体重の減少 | 胎児の先天的疾患 |
症状が重くなると、悪性貧血のほか、血中のホモシステイン濃度が上がり、動脈硬化の発症するリスクが高くなります。気になる症状が出はじめたら、かかりつけ医に相談しましょう。これらの症状は、葉酸の経口投与や適切な治療によって改善できます。
葉酸の欠乏を防ぐには?
生の野菜や柑橘類を食べる機会が少なくなると、葉酸欠乏症にかかるリスクが高くなります。葉酸が不足しがちな方は、葉物や果物を意識して取るようにしましょう。サプリメントなどを上手に併用し、不足している葉酸や必要な栄養を補うことが大切です。
葉酸が不足する原因
- ビタミンの不足、食生活の乱れ(栄養の偏り)
- アルコールの過剰摂取
- 妊娠中(胎児の成長に葉酸が使われるため)
- 服用中の薬の影響(抗生物質など)
- 病気や術後の影響による、葉酸の吸収不良
- 喫煙による葉酸濃度の低下
このように、さまざまな原因が引き金となり、必要な葉酸が不足してしまいます。普段から飲酒や喫煙の量(回数が)多い方は、葉酸を意識して摂取するようにしましょう。また、妊娠中・授乳中の方は、推奨される葉酸や栄養素が不足しないように、注意してください。
喫煙と飲酒の影響について
喫煙を行うことで、細胞内の葉酸代謝能力が低下し、結果として体内の葉酸濃度が大幅に低下します。妊娠中に禁煙を奨めるのも、こうした「葉酸濃度の低下」による健康リスクの増加が主な理由です。
葉酸欠乏症の症状① 貧血について
葉酸やビタミンB12が不足すると、骨髄の中で赤血球の生成が正常に働かなくなるのですが、異常な巨赤芽球が発生する貧血を「巨赤芽球性貧血」と言います。
巨赤芽球性貧血の主な症状
巨赤芽球性貧血は、同期や息切れ、倦怠感、顔面蒼白などの一般的な症状に加え、舌の炎症や痛み、味覚の低下のほか、若年性白髪を引き起こします。
また、症状が重くなると、しびれやふるえ、歩行障害、軽度の精神障害が発症します。巨赤芽球性貧血の症状が疑われる場合は、医療機関で血液検査や骨髄検査を受けるようにしましょう。
巨赤芽球性貧血の治療法
必要なビタミンを注射や点滴、経口投与で補います。多くの場合、これらの治療で症状が改善していきますが、必須栄養素の欠乏が大きな場合は、治療に加え、普段の食事で改善(食事療法)していく必要があります。
葉酸欠乏症の症状② 動脈硬化
必要な葉酸を摂取することで、動脈硬化の発症リスクが低下します。これは、動脈硬化を促進するホモステインと呼ばれる、アミノ酸の働きが抑えられるからです。
シニア世代と葉酸不足
アメリカ大陸やオセアニア、アフリカ諸国など、世界76カ国(※1)では、循環器系疾患を予防する目的で ”Compulsory folate fortification of cereals”を実施しています。ここでは、高齢者に葉酸の栄養素添加を行い「疾病リスクを減らす」国際的な取り組みを実施しています。
葉酸添加による効果
実際に、葉酸の添加を行うことで、心不全や動脈硬化、脳卒中予防の医学的なデータと根拠が次々と発表されています。
残念ながら、日本は ”Compulsory folate fortification of cereals”の参加国ではありません。しかし、2000年を境に(厚生労働省などの取り組みで)妊婦に対して、葉酸の摂取を推奨するようになりました。
注1)Compulsory folate fortification of cerealsを実施する76カ国のうち、75カ国では「強制的な葉酸添加」を法律によって、義務付けられています。
葉酸プロジェクト
埼玉県の坂戸市では「葉酸プロジェクト」と題して、認知症や脳梗塞の発症リスクを抑えるため、葉酸の摂取を大々的に広める活動を行っています。国際的に葉酸の価値や評価が高まる中、日本でも、今後さまざまな取り組みが、広がっていくことでしょう。
葉酸の過剰摂取に気をつけよう
葉酸の不足も心配ですが、葉酸を過剰に摂取すると、吐き気や頭痛、むくみ、紅斑などの副作用が起こりやすくなります。1日に1,000μgを越える葉酸は、摂取しないよう「容量や用法」を守って服用しましょう。