「葉酸」は、妊娠中・出産後のお母さんにかせない栄養素です。ここでは、葉酸がどのように働き、赤ちゃん(胎児)の健康をサポートするのか、詳しく説明したいと思います。
葉酸のはたらき
葉酸はDNAや細胞分裂、造血に関わる重要な栄養素です。葉酸を取ることは、赤ちゃんの脳や神経の発育を助けます。このため、妊娠後ではなく、妊娠の準備段階(妊娠前)から、必要な葉酸を取るようにしましょう。
葉酸が不足すると、赤ちゃんはどうなる
妊娠初期にあたる4週目から12週目頃までは(毎日の食事で)葉酸が不足しないよう、注意してください。葉酸不足に陥ると、お腹の中の赤ちゃんが先天性疾患にかかりやすくなるので大変危険です。二分脊椎症や無脳症などの発症リスクを抑えるためにも、1日あたり480μg〜500mμgの葉酸を必ず取るようにしましょう。
いつから摂取すれば良いの?
葉酸の摂取は「妊娠の可能性」が分かるよりも早く、必要な量を補うようにします。
妊娠後では、遅すぎる可能性があります。このため、妊活中のお母さんは(できるだけ)早い時期に「1日あたり300μg〜400μg」を取るようにしてください。
葉酸で「神経管閉鎖障害」を予防する
「神経管閉鎖障害」と呼ばれる先天異常があります。これは、脳や脊髄が上手くくっつかなくなる(脊髄の神経組織が脊椎の骨で覆われない)症状を指します。神経管閉鎖障害が発症すると、排泄機能や下肢に障害が残ることがあります。
先天異常の発症リスクを下げるためには(妊娠初期に)ビタミンや、必要な栄養素が不足しないようにしましょう。葉酸には、神経管閉鎖障害の発症リスクを軽減する働きがあります。1日あたり480㎍の葉酸は必ず取るようにしてください。
葉酸は「無脳症」の発症リスクを抑える
無脳症とは、大脳が欠損したり小さく縮小する恐ろしい病気です。胎児にこの症状が出てしまうと、発症した胎児の約7割〜8割は死に至ると言います。
無脳症の原因について
無脳症が発症する原因は、遺伝や体内での栄養不足と言われています。無脳症が発症しないよう、必要な栄養はきちんと補うようにしましょう。
葉酸は、細胞の生成や造血に関わる大切な栄養素です。お母さんがしっかり栄養を補うことで、赤ちゃんの神経細胞や脳、体の成長を支えることができるのです。このため、妊娠中にダイエットをしたり、偏った食事をしてはいけません。
必ず、妊娠中に必要な葉酸、亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB12、ビタミンB6を補うようにします。また、魚に含まれるDHAやEPAも、赤ちゃんの認識力(知能の発達)に良い効果を与えます。
葉酸 | 亜鉛 |
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鉄 | カルシウム |
マグネシウム | ビタミンB12 |
ビタミンB6 | DHA・EPA |
葉酸
細胞分裂に関わり、脳や神経をつくる。無脳症や二分脊椎の発症リスクを下げる働きがある。
亜鉛
体内の酵素に必要な栄養素。遺伝子やたんぱく質の合成に欠かせない成分。細胞分裂を促す働きがある。
鉄
胎児に酵素を送るため、欠かせない栄養素。貧血のリスクを下げ、妊娠中の辛い症状を和らげる働きもある。
カルシウム
胎児の骨をつくるために必要な栄養素。母胎にも「骨粗しょう症」の予防のため欠かせない成分。
マグネシウム
カルシウムの吸収に欠かせない栄養素。カルシウムとセットで補うようにする。
ビタミンB12
葉酸とともに、赤血球の形成に必要な栄養素。
ビタミンB6
葉酸とともに、赤血球の形成に必要な栄養素。
DHA・EPA
胎児のIQや認識力に関わる重要な栄養素。
海外では早くから「妊婦は葉酸を摂取すべき」との考えがありました。日本で妊娠中の葉酸摂取が推奨されるようになったのは、平成12年のことです(厚生労働省推奨)。
妊娠中の摂取量
妊娠6週目までは、胎児の脳や神経がつくられる大切な時期です。妊娠の可能性がある時点から、葉酸やビタミンなどを1日400μg〜500μg補うようにしましょう。
過剰摂取に気をつけて!
葉酸の耐容上限量は(成人の場合)1日1,400㎍までと決まっています。この量を超えないよう、葉酸を過剰摂取しないようにしてください。
葉酸が不足するのは危険ですが、反対に過剰摂取をしてしまうのも良くありません。多く取り過ぎてしまうと、過敏症やアレルギーにかかる恐れがあります。1日1,000㎍を越えないように摂取してください。
妊娠中、葉酸を上手く取るには?
妊娠中の葉酸は、食事のほかサプリメントと併用して補うようにしましょう。どんなに沢山野菜や果物、肉類(レバーなど)を取ったとしても、食事から補える量はわずかです。
特に葉酸は、加熱などで成分が失われやすく、調理したものだけでは「葉酸不足」に陥る可能性が高いです。葉酸サプリなどを上手く取り入れ、妊娠前から、健康な赤ちゃんを迎える準備を始めてください。